東野圭吾『11文字の殺人』

~『11文字の殺人』7つのポイント~

 

『11文字の殺人』は、東野圭吾5作目の作品。

これまでは学生が主人公の作品ばかりでしたが、今回は30台の女流推理作家。

初めて職に就いた人が主人公になっており、これまでの作品とは少し雰囲気の違う本格ミステリー。

事件の背景や犯人の動機など、色々賛否両論ある作品でもあります。

 

「気が小さいのさ」あたしが覚えている彼の最後の言葉だ。

あたしの恋人が殺された。

彼は最近、「狙われている」と怯えていた。

そして、彼の遺品の中から、大切な資料が盗まれた。

女流推理作家のあたしは、編集者の冬子とともに真相を追う。

しかし、彼を接点に、次々と人が殺されて・・・。

11文字に秘められた真実とは?

サスペンス溢れる本格推理!

 

さあ、『11文字の殺人』について語りましょう。

 

 

1 あらすじ

「あたし」の恋人・フリーライターの川津雅之は最近誰かに命を狙われていると感じていた。

出会いから2ヶ月、川津は海で無残な死体で発見された。

そして彼の遺品を整理したときに現れたカメラマンの新里美由紀。

彼女は川津の遺品の中の資料にこだわっていた。

そして、「あたし」が預かった遺品から何かが誰かによって盗まれた様子。

「あたし」は新里美由紀と会う約束をしたが、次はその新里美由紀が殺された。

川津が残し、何者かに盗まれた資料が2人の殺人事件に関係している。

そう思った「あたし」は編集者で親友の冬子と一緒にこの2つの事件の謎の解明に取り掛かる。

次々と浮かび上がる事実と、事件の背景にある出来事。

「あたし」は調査を続けるが、さらに被害者が出てしまう。

何故被害者は命を狙われたのか。

「無人島より殺意をこめて」、この11文字に隠された謎とは?

 

 

2 登場人物

 

あたし

女流推理作家。30代。

萩尾冬子

編集者。「あたし」の親友。「あたし」と同い年。

川津雅之

「あたし」の恋人。フリーライター。何者かに殺される。

新里美由紀

カメラマン。川津と仕事をしたことがあり、川津の遺品の資料にこだわる。

山森卓也

ヤマモリ・スポーツプラザの経営者で、「ヤマモリグループ」オーナーの娘婿。

春村志津子

ヤマモリ・スポーツプラザの事務員。

石倉佑介

ヤマモリ・スポーツプラザのインストラクター。山森卓也の実弟。

山森由美

山森卓也の娘。生まれつき目が不自由。

山森正枝

山森卓也の妻。

村山則子

山森卓也の秘書。山森卓也の姪にあたる。

金井三郎

ヤマモリ・スポーツプラザの従業員。

坂上豊

スポーツセンターの会員。役者。

古澤靖子

ツアー参加者。24歳OL。住所は練馬区。

竹本幸裕

海難事故で死亡。

竹本正彦

竹本幸裕の弟。

 

3 3つの殺人事件の謎

川津雅之が殺された後、立て続けにさらに2つの事件が起こる。

川津が遺した資料がこれらの事件に関係しているのは間違いない。

その背景にはクルーザーの転覆事故があった。

その事故の関係者が次々と殺されていくのは何故か。

そのクルージングツアーに隠された秘密とは?

 

 

4 「あたし」の行動力

「あたし」は女流推理作家。

友人の冬子が編集者ということもあり、作品の取材と称して事件の謎に迫りやすい立場にある。

しかし、出会ってたった2ヶ月の恋人の死のためにそこまで動くのかな、という違和感もある。

預かった遺品から何かが盗まれた形跡があったことから、物書きとしての魂が揺さぶられたからなのか。

少し感情移入しづらい主人公かもしれない。

 

 

5 登場人物たち

登場人物が多い分、キャラクターが薄い登場人物がいるのも否めない。

ストーリー自体がそれほど長くないため、1人1人を掘り下げることができなかったからなのか、そもそも掘り下げる必要がないのか。

関係者たちがひた隠しにするクルージングツアーの秘密も何となく予想ができる。

しかし、その裏側にある事情を知ると人間の下卑た部分が見え、どちらが正しい判断なのかについて考えさせられる。

極限状態に置かれた人間の心理と行動とは恐ろしい。

 

 

6 第4の犠牲者

以前事故が起きたツアーと同じようなクルージングツアーが企画され、「あたし」は冬子と一緒に参加することになる。

そこで起こるもう1つの事件。

その被害者は意外な人物だった。

この事件の裏側にある謎とは?

密室事件でもアリバイ崩しでもないこの事件。

問題はその動機。

人それぞれ価値観があり、どれが正解でどれが間違っているかは一概には言えないが、読者により印象や感想は全く異なるのではないだろうか。

 

 

7 人の価値観

この作品のモデルには、会社研修などで使われることもあるストーリーが題材になっている。

そのストーリーの登場人物について好感が持てる順に並べよ、という課題なのだが、人によって価値観はバラバラ。

犯人を暴いて謎を解き明かしすっきり解決、というのが推理小説の基本的な流れだが、この作品はそこで終わらせていない。

読者の価値観、判断、考えを問われ、ただの1つの読み物として終わっているわけではない。

結末にすっきりしない読者も多いのではないだろうか。

しかしそれぞれの登場人物の取った行動や考え方、価値観について議論するのも楽しいかもしれない。

1つ残念なのは、『11文字の殺人』というタイトルと内容がいまいちしっくり来ないこと。

11文字に何かこだわったストーリー展開なのかと思ったが、そんなことはない。

原題は『無人島より殺意をこめて』というらしいが、そちらの方がハマっているような気がする。

 

まとめ

『11文字の殺人』7つのポイント

1 主人公が女流推理作家でバイタリティに溢れている

2 3つの殺人事件の真相とは?

3 クルージングツアーの秘密とは?

4 第4の事件の謎とは?

5 極限状態に置かれたときの人間の行動や心理とは?

6 読者はどの登場人物に感情移入し同意できるのか

7 密室やアリバイなどの難しいトリックは無い

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