東野圭吾『放課後』

~『放課後』7つのポイント~

 

東野圭吾のデビュー作『放課後』。

名門女子高を舞台にしたミステリー小説で、第31回江戸川乱歩賞を受賞しました。

 

校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。

先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将 ―――。

犯人候補は続々登場する。

そして、運動会の仮装行列で第二の殺人が・・・。

乱歩賞受賞の青春推理。

 

さあ、『放課後』について語りましょう。

 

 

1 あらすじ

私立清華高等学校に勤務する数学教師前島は最近何者かに命を狙われ始めていた。

線路に突き落とされそうになったり、シャワーを浴びているときに家庭用コードの先端を放り込まれたり、頭上から鉢植えが落ちてきたり。

前島は校長に相談するも全く取り合ってもらえないばかりか、息子の見合い相手にしたい麻生教諭について調べるよう指示する。

前島が顧問を務めるアーチェリー部の練習に参加したある日、前島とアーチェリー部キャプテンの杉田恵子は、生活指導部の教師村橋が教師用の更衣室の中で死んでいるのを発見する。

死因は青酸中毒で、更衣室の出入り口の1つである男性用更衣室は心張り棒が引っかけられており、もう一方の出入り口である女性用更衣室は施錠されていたため、更衣室への出入りは誰もが不可能な状態であった。

密室の謎、村橋が殺される理由、前島を狙う人物の正体が分からぬまま、第2の殺人が体育祭という衆人環視の中、発生する。

 

2 登場人物

前島

清華女子高教諭。科目は数学。アーチェリー部顧問。

技術職サラリーマンから数学教師へ転職した。

就任当初は生徒にいつも見られている気がして苦痛だったが、そのうち生徒は教師に興味を持っていないことを察し楽になる。

授業以外のことは話さずに授業に徹底することから「マシン」というあだ名をつけられる。

妻がいる。

杉田恵子

清華女子高3年。アーチェリー部キャプテン。

前島に親しく接し、合宿時は前島とキスをした。

通称ケイ。

高原陽子

清華女子高3年。学園の問題児で喫煙が見つかり停学になる。

複雑な家庭環境に育つ。

前島を2人きりの旅行に誘ったが応えてもらえなかったため、それ以降前島に対する視線が冷たい。

北条雅美

清華女子高3年。剣道部主将。学年トップの成績を誇る3年A組の級長。

ルールの範囲内で生徒指導部に矛先を向け反抗するある意味問題児。

村橋とも対立している。

朝倉加奈江

清華女子高3年。アーチェリー部サブリーダー。

宮坂恵美

清華女子高1年。アーチェリー部。

村橋

清華女子高教諭。科目は数学。生徒指導部。

愚痴が多い。

最初の被害者。

竹井

清華女子高教諭。科目は体育。

現役の槍投げ選手であだ名は「ギリシャ」。

栗原

清華女子高校長。ワンマン経営者。

麻生恭子

清華女子高教諭。科目は英語。

清楚でおとなしそうな外見とは裏腹に、遊びの恋を好む。

前島の同僚のことも弄んだため、前島からは快く思われていない。

小田

清華女子高教諭。科目は体育。

清華女子高教諭。科目は国語。バレーボール部顧問。

教師用女子更衣室の利用者である中年女性教師。

藤本

清華女子高教諭。テニス部顧問。

若い教師で好奇心が強い。

大谷

清華女子高で発生した殺人事件の捜査を担当する刑事。

前島裕美子

前島の妻。夫婦に子供はいない。近所のマーケットに働きに出ている。

 

 

3 主人公前島

教職に興味があったわけではなく成り行きで5年前に教師になった。

元々家電メーカーで働いていたが、東北への転勤を示唆されたため、亡父の友人であった栗原校長の伝手で清華女子高に就職している。

「マシン」のあだ名どおり授業中も余計なおしゃべりはせず、また、口うるさく生徒の指導をしないためか、生徒受けは悪くない。

それにしても、妻帯者であり取り立てて容姿端麗とも思えない前島が、何故特定の生徒から頼られ好意を寄せられるのか、前島の魅力とは一体どこにあるのだろうか、少し理解しづらい。

しかし舞台が女子高であり、思春期で精神年齢的にも大人になりきれていない女子高生から見ると、前島は十分に魅力的に映るのかもしれない。

 

 

4 その他キャラクター

主人公前島にこれといった魅力が無いのに対し、それ以外の登場人物はキャラクターがしっかりしている。

特に清華女子高の生徒3人。

前島に懐き合宿でキスまでした快活なアーチェリー部主将杉田恵子。

前島を頼ったが応えてもらえずその後厳しい視線を送る影のある高原陽子。

文武両道で学園創設以来の才女である北条雅美。

生徒と教師のやり取りなど、自然な描写がなされており、キャラ分けも明確。

主人公をはじめ大人側のキャラクターが薄い分、彼女たちのキャラがより引き立っている。

思春期の女子高生の複雑な心理状況が絶妙に描かれているのではないだろうか。

 

5 密室殺人のトリック

壁により隔たれてはいるが、やろうと思えば行き来できる男性更衣室と女性更衣室。

しかし男性更衣室には心張り棒があり、女性更衣室は施錠されている。

このような密室状態を犯人は何故、どのように作り上げたのか。

心張り棒を使った密室なので、そのトリックの解明には分かりやすく図解が用いられている。

東野圭吾作品と図解はあまり結びつかなかったが、初期作品には図解が用いられているものもいくつかある。

それにしても、このトリック、贅沢・・・。

 

 

6 命を狙われる主人公と事件の関係

冒頭から命を狙われている主人公。

何者かが殺意を持っている、そのことをこの3日で3度感じている。

そして発生する殺人事件。

事件現場は主人公がよく使う教師用更衣室。

被害者は主人公と間違えられて殺されてしまったのか。

さらに第2の事件が発生するが、これも本来の被害者は主人公だった?

何故主人公が命を狙われるのか、一体誰が主人公に殺意を抱いているのか。

そしてどのようなトリック、方法を犯人は用いたのか。

様々な伏線が張りめぐらされており、そして思わぬ謎が解明される。

 

 

7 動機

犯人が殺人を犯した動機。

ミステリーにおいて犯行動機は不可欠であるが、とりわけこの作品においては犯人の動機が重要なポイントとなっている。

その動機や結末については賛否両論あるが、犯人の心情を察すると殺害するに十分に値する動機なのであろう。

 

 

まとめ

『放課後』7つのポイント

1 主人公が命を狙われる理由とは?

2 密室殺人のトリックとは?

3 トリックが贅沢

4 第2の殺人のトリックとは?

5 女子高生の巧みな描写、思春期の複雑な心理描写

6 犯人は誰か?

7 犯行動機は何か?

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