東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』

~『ある閉ざされた雪の山荘で』7つのポイント~

 

『ある閉ざされた雪の山荘で』は、東野圭吾21作目の作品。

とは言っても、実際に閉ざされた雪の山荘にいるわけではありません。

舞台は仮想の雪の山荘。

この仮想の雪の山荘でのクローズとサークルという異色の設定が使われています。

この事件は果たして芝居なのか、それとも現実に起こっていることなのか。

騙されること必至です。

 

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女七名。

これから舞台稽古が始まる。

豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ

だが、一人また一人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。

はたしてこれは本当に芝居なのか?

驚愕の終幕が読者を待っている!

 

さあ、『ある閉ざされた雪の山荘で』について語りましょう。

 

1 あらすじ

早春の乗鞍高原のペンション『四季』に、有名演出家・東郷陣平のオーディションに合格した7名の男女が集められる。

豪雪に襲われ孤立した山荘で起こる殺人劇、という設定の舞台を自分たちで作り上げることが彼らに与えられたミッション。

人里離れたペンションで、外部との接触も一切できない、このような状況の中起こる出来事に対し、自分たちだけで対処し、それを作品として作り上げるように指示される。

実際は雪も降っていないし、簡単に外に出ることもできる。

しかし、外に出ること、外部と連絡を取ることは禁止されており、それを守れなかった場合はオーディションの合格も取り消されてしまう。

変わった演出家である東郷の指示だけに、7名は戸惑いながらもその指示に従うが、やがて1名が殺されてしまう。

しかし、実際に死体があるわけではなく、そこにあるのは死体発見時の状況が書かれた「指示書」のみ。

登場人物たちはこれが実際の起きた事件なのか、はたまた芝居なのか戸惑う。

続いて起きる第2の事件で、これは芝居ではなく実際に起きている殺人事件であると感じる登場人物たち。

しかし、これも東郷の立てた計画なのではないかと思うと、その場から逃げ出すことも、外部に連絡することもできない。

果たして、この事件の真相とは?

 

 

2 登場人物

久我和幸

劇団『堕天塾』の劇団員。劇団『水滸』のオーディションに合格する。

笠原厚子

劇団『水滸』の団員。女性陣のリーダー格。

田所義雄

劇団『水滸』の団員。感情が激しい。由梨江に好意を持っている。

雨宮恭介

劇団『水滸」の団員。男性陣のリーダー格。

元村由梨江

劇団『水滸』の団員。美貌の持ち主。

本多雄一

劇団『水滸』の団員。一見粗野だが芝居の実力がある。

中西貴子

劇団『水滸』の団員。色気と才能がある。

小田伸一

ペンション『四季』のオーナー。

東郷陣平

劇団の演出家。奇をてらった演出や稽古を行う。

麻倉雅美

元・劇団『水滸」団員。実力がありながらオーディションに落選する。

 

 

3 第一の事件

ペンション『四季」の滞在期間は3泊4日。

その間に何が起こるか分からない7人。

早速初日の夜に事件が起こる。

7名のうちの1名がが殺される。

しかし、殺されると言っても、そこにあるのは死体ではなく、死体の状況を説明した「指示書」のみ。

被害者の姿はどこにも見当たらないが、残されたメンバーは、これは推理劇の一部だとしか思っておらず、とりあえず設定に自分たちの役割を寄せようと振る舞う。

 

 

4 第二の事件

実際に目の前で殺人事件が起こったらどのように振る舞うのか、それぞれが意見を出し合い、ペンション内の捜索をしたり、食事について考えたりする。

そうして迎えた2日目の夜。

今度は別の人物が何者かに襲われる。

3日目の朝、その人物の姿が見えず、「指示書」を発見したときまでは、劇が展開したとだけ考えていたメンバーたち。

しかし、あるモノを見つけたときに、これは本当に起こっている殺人事件ではないかと疑惑が生まれる。

しかしオーディションの都合上、逃げ出すことも外部に連絡を取ることもできない。

お互いがお互いを牽制し合いながら、推理が繰り広げられていく。

 

 

5 久我和幸の視点

地の文の他に、「久我和幸の独白」というパートが挿入されている。

この7人のメンバーの中では久我だけが外部から来た人間。

どのような意図があってこのような設定の稽古をしなければならないのか。

実際に殺人は起きているのか、それともやはり芝居なのか。

犯人は誰なのか、そしてその動機は何なのか。

久我は色々と考えを巡らせる。

しかし、久我のキャラクターがいまいちつかめないところがあるように感じる。

地の文ではクールな久我だが、独白では完全に本心を暴露しており、由梨江に対する思いなども語っている。

最初は地味で冴えない男と思い読んでいたら、実はイケメンだったり、ちょっとキャラクター像が頭の中でまとまるのに時間がかかってしまった。

ラストシーンの久我も、これまでそんな一面があったのかな、とちょっと違和感を覚えたが、物語をきれいにまとめるという意味ではよいのかもしれない。

 

 

6 事件の犯人

閉ざされた雪の山荘で起きた殺人劇という設定であるため、当然犯人は存在する。

2人目が殺された?後、もう1名犯人の毒牙にかかる人物がいる。

すると残りは4名。

独白をしている久我以外の3名の中に犯人はいるはずである。

果たして犯人は誰なのだろうか。

そして動機は何なのだろうか。

それ以前に、果たして殺人は起こっているのだろうか。

それともこの山荘で起きた出来事すべてが巧妙に仕組まれた舞台稽古なのだろうか。

 

 

7 驚くべき真相とトリック

この物語の真相はアッと驚くものだ。

多くの読者がこの叙述トリックに騙されるのではないだろうか。

このトリックについては賛否両論分かれるかもしれない。

「騙された」と素直に負けを認める人と、「これはずるい」と負けを認めない人。

スカッとする人と、拍子抜けする人。

これに関しては、完全に好みや読書の慣れによって変わるものであり、一概には言えないが、この手のトリックはあまりお見掛けしないので、読んでみる価値は十分にあると思う。

 

 

まとめ

『ある閉ざされた雪の山荘で』7つのポイント

1 仮想の世界のクローズドサークル

2 外出も外部との連絡もできない状況設定

3 舞台稽古としてとらえている登場人物たち

4 実際に事件が起きても稽古だと思っている

5 実際の事件ではないかと疑心暗鬼になっていく様子

6 地の文と久我の独白で物語は展開

7 驚くべき叙述トリックと物語の結末

 

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