東野圭吾『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』

~『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント~

 

『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』は、東野圭吾13作目の作品。

産業機器メーカーで働く主人公が、己の出世と保身のために悪事に手を染めようとする話です。

自身の過去の経験から、人間よりも機械のほうが信頼できる主人公は、同情すべき余地もあるのでしょうか。

登場人物が軒並み悪人。

こういう話も読みごたえがあるのかもしれません。

 

産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。

将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。

そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ・・・。

大阪→名古屋→東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした!

傑作長編推理!

 

さあ、『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』について語りましょう。

 

 

1 あらすじ

中堅産業機器メーカーに勤める末永拓也。

上昇志向が強く、これまでも数々の実績を積み重ねてきた。

上層部に取り入ろうと、オーナーの末娘の婿養子になることを目論むが、関係を持った女性・康子から妊娠を告げられる。

康子は堕胎するつもりは毛頭ない。

野望を達成する前にこのトラブルをどのように解決しようか考えていた矢先、専務の息子・直樹から呼び出しを受ける。

そこには同僚の橋本の姿も。

直樹も橋本も康子と関係を持っており、誰が康子の子の父親かが分からない。

それぞれにとって康子の妊娠は不都合であるため、共同で康子を殺害する完全犯罪計画を練るが・・・。

計画を実行に移すと、思いがけない出来事が起こる。

 

 

2 登場人物

末永拓也

産業機器メーカー「MM重工」勤務。人工知能ロボットの研究開発を行う。

自身が手掛けたロボット『ブルータス』を愛する。

雨宮康子の殺害計画に参画する。

雨宮康子

「MM重工」役員室勤務。拓也と関係を持つが、相手は拓也だけではなかった。

拓也に妊娠を告げ、堕胎しないと宣言する。

仁科直樹

拓也の上司。「MM重工」開発企画室長で専務の息子。

雨宮康子殺害計画の発案者。

橋本敦司

「MM重工」勤務。極限ロボットの開発に従事。雨宮康子殺害計画に参加。

仁科敏樹

「MM重工」専務。直樹の父。

仁科星子

仁科敏樹の次女。

仁科沙織

仁科敏樹の長女。

宗方伸一

仁科沙織の夫。「MM重工」航空機事業部研究主任。

中森弓絵

「MM重工」開発企画室勤務。

酒井悟郎

「MM重工」作業員。中森弓絵の幼馴染。

高島勇二

「MM重工」に勤務していた作業員。1年前に作業中の事故で命を落とす。

佐山総一

警視庁捜査一課刑事。

 

 

3 殺害計画

雨宮康子から妊娠を告げられ堕胎しないことを宣言されたのは拓也だけではなかった。

開発企画室長の仁科直樹と、拓也の同僚・橋本敦司も同様に康子から責任を取るよう迫られていたのだ。

しかし康子の子供の父親は誰か分からない。

直樹は康子から莫大な養育費を要求され社内での立場が危うくなることを危惧している。

橋本はこれまでの順風満帆な出世街道が危ぶまれることを恐れている。

そして拓也にとっては星子との結婚の大きな障害になる。

3人の思惑が一致し、共同で康子を殺害することを計画する。

3人は大阪、名古屋、東京に別れ、大阪で康子を殺害し死体を名古屋まで運び、名古屋から東京に運び死体を処理する、という殺人リレーを計画する。

詳細まで計画を練り、ついに康子殺害の実行日。

名古屋担当になった拓也は、待ち合わせ場所に駐車されていた車で東京に向かい、東京担当の橋本に死体を引き渡す。

しかし現れた死体は康子のものではなかった。

 

 

4 第二の被害者

第一の事件が起こってから数日後、第二の事件が起こる。

当初は自殺と思われたのだが、警察の捜査中にトリックを使った殺人だということが判明する。

犯人はいったいどのような方法でこの事件を起こしたのか。

そして犯人は一体誰なのか。

拓也は迫りくる恐怖に対しどのように立ち向かうのか。

 

 

5 末永拓也

決して恵まれた人生を送ってこなかった末永拓也。

幼い時に母を亡くし、左官職人だった父は酒に溺れ、拓也にも暴力を振るう。

少年時代に父を憎み軽蔑した拓也は、あらゆる欲望を抑え、自力で東京の大学に合格する。

大学入学後も人一倍の努力を重ね、大学院で「MM重工」との共同開発に携わる。

以降、「MM重工」に入社し、順風満帆に実績を重ねていく。

自分は選ばれた人間である、自分は人を支配する最上層の人間になる、という野望を持ち、星子の婿養子になるために尽力する。

拓也は人を信じていない。

信じられるのは自信が手掛けたロボットのみ。

このような屈折した性格も、拓也の生い立ちが大いに関係しているのであろう。

 

 

6 事件の真相

雨宮康子殺害計画は拓也の全く予想していない展開となった。

そして第二の事件が起こる。

計画の発案者である直樹に何か拓也たちに知らせていない思惑があるのではないか、そう考えた拓也は、警察に疑われながらも独自に捜査を行う。

そして導き出された結論は・・・。

事件の真相、そして真犯人は意外な人物だった。

 

 

7 総評

利害関係の一致する3人が結託しての殺人計画。

そしていざ実行してみると計画とは異なる人物の死体が現れる。

設定としては大変面白いのだが、どこか全体的に中だるみ感があったような気がする。

それは、ひょっとしたらどの登場人物にも感情移入できなかったからなのか。

謎解き自体は引き込まれるのだが、拓也というキャラクターに同調できないところがある。

主要登場人物にろくでもない人物が多いのも理由なのか。

そして最後の結末。

残り数ページの追い込み感がすごかったが、この結末には賛否両論分かれるかもしれない。

結局、この作品の登場人物で救われたのは誰なのだろうか。

 

 

まとめ

『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント

1 3人で共謀して殺人リレーを行うという設定の面白さ

2 運ばれていた死体は意外な人物のものだった

3 続いて起こる第二の事件

4 末永拓也のキャラクター

5 主要登場人物にろくな人物がいない

6 物語の結末は?

7 この作品で救われたのは誰か

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