東野圭吾『分身』

~『分身』7つのポイント~

 

『分身』は、東野圭吾24作目の作品。

函館生まれ札幌の大学に通う18歳の氏家鞠子。

子供のころから母親に愛されていないのではないかと疑問を抱いていました。

東京に住む20歳の大学生小林双葉。

所属するロックバンドがオーディションに受かりテレビ出演することになりますが、母親からは頑なにテレビ出演を反対されます。

まったく別の人生を歩んできたこの2人の視点で書かれた長編作品です。

 

函館市生まれの氏家鞠子は18歳。

札幌の大学に通っている。

最近、自分にそっくりな女性がテレビ出演していたと聞いた―。

小林双葉は東京の女子大生で20歳。

アマチュアバンドの歌手だが、なぜか母親からテレビ出演を禁止される。

鞠子と双葉、この二人を結ぶものは何か?

現代医学の危険な領域を描くサスペンス長篇。

 

さあ、『分身』について語りましょう。

 

 

1 登場人物

氏家鞠子

札幌の女子大生。18歳。自らの出生に疑問を持つ。

小林双葉

東京の女子大生。20歳。バンド活動に励む。

氏家清

氏家鞠子の父。函館理科大教授。

氏家静恵

氏家鞠子の母。

シスター・細野

中学時代の鞠子の寄宿舎の寮長。

春子さん

中学時代の鞠子の寄宿舎で同室。

鈴江さん

中学時代の鞠子の寄宿舎で同室。

下条さん

程度大学医学部女学生。鞠子の調査をサポートする。

梅津正芳

帝都大学医学部教授。氏家清の大学時代の友人。

笠原教授

帝都大学経済学部教授。ハイキングサークルに所属していた。

清水宏久・夫人

宏久は故人。帝都大学時代に氏家清と同じハイキング同好会に所属。

畑村啓一

大学時代に氏家清と同じハイキング同好会に所属。

小林志保

小林双葉の母。看護師。

脇坂講介

出版社の雑誌記者。双葉の調査をサポート。

望月ユタカ

双葉のバンド仲間。

カンタ

双葉のバンド仲間。

トモヒロ

双葉のバンド仲間。

久能俊晴

故人。北斗医科大学元教授。

藤村教授

北斗医科大教授。発生工学を研究。

尾崎

藤村教授の助手。

伊原駿策

元首相。

大道庸平

伊原駿策の第一秘書。

高城康之

故人。帝都大学出身。

阿部晶子

写っている写真がことごとく無くなっている女性。

 

 

2 あらすじ(前編)

氏家鞠子は母親から愛されていないのではないかと感じていた。

その原因は鞠子が父親にも母親にも似ていないからではないかと思い、自分の出生に疑問を持つ。

そして中学生になったら家を離れ寄宿舎のある学校に入学することになった。

年末に帰省した鞠子は、家族団らんのあと突然の睡魔に襲われる。

そして気が付くと家が火に包まれていた。

鞠子と父・清は無事だったが、母・静恵は命を落とす。

この火事は静恵が自ら火を点け無理心中を図ったものとしか思えなかった。

 

東京の20歳の女子大生・小林双葉は看護師の母・志保と2人暮らし。

バンド活動に励み、テレビのオーディション番組への出演が決まる。

しかし母親は頑なにテレビ出演を禁じる。

夢を捨てきれない双葉は母の言うことを聞かずにテレビ出演を決行する。

その一週間後、見知らぬ男が家を訪れ母と話しているのを目撃する双葉。

母がかつて大学で助手をしていた時に、やはり助手をしていた人物で今は大学教授だという。

またテレビ局の人間と偽り双葉が通う大学にも現れた人物がいるらしい。

そんな時、双葉の元に警察から連絡が入る。

それは、母・志保が交通事故に遭ったという知らせだった。

病院にたどり着いた双葉が見たのは、顔に白い布をかけられた志保の姿だった。

 

 

3 あらすじ(中編その1)

母が心中を図った原因が自分の出生に秘密があると感じた鞠子はそのことを父に問い詰めるが、父は一向に取り合わない。

東京の大学へ進学することを頑なに許可しなかった父が、最近は海外留学を盛んに進めるようになっている。

ある日父の大学時代の写真を見つけた鞠子。

そこにある写真に写っている1人の女性の顔が黒く塗りつぶされていた。

全ての謎は父の大学時代、そしてこの女性にあると確信した鞠子は上京し、父の母校である帝都大学へ足を運ぶ。

帝都大学医学部の下条の協力も得ながら調査を進める鞠子。

その時に、自分と瓜二つの小林双葉という女性の存在を知る。

 

一方、母の葬儀を健気に終えた小林双葉。

母の遺品の中から、大物政治家・伊原駿策に関するスクラップを発見する。

そして、事故の前日に母と話していた男性・藤村から連絡を受け、母の死の真相を知るべく北海道に向かう双葉。

藤村との面会の後、チンピラに絡まれた双葉を救ったのは、双葉に接触してきた雑誌記者・脇坂講介だった。

脇坂は双葉に対し、藤村から逃げるように忠告する。

脇坂に助けられながら真相を解明しようとする双葉。

そして、自分と瓜二つの氏家鞠子という女性の存在を知る。

 

 

4 あらすじ(後編)

ここから一気に物語は加速する。

2人の出生の秘密が少しずつ明らかになり、その裏に隠された氏家清と小林志保、そして顔を黒塗りにされた女性の関係が明らかになる。

鞠子と双葉、年齢も生まれも育ちも違うこの2人が何故瓜二つなのか。

その裏には信じられない真相が隠されていた。

一連の黒幕と会った双葉と脇坂。

双葉はもう1人の自分である鞠子に会うことを決心する。

一方鞠子は危険な状況に陥っていた。

果たして鞠子はこの危機的状況から脱出することはできるのか。

そして双葉は鞠子と会うことはできるのか。

最後までハラハラドキドキ息が詰まるような展開が繰り広げられる。

 

 

5 氏家鞠子

函館生まれで札幌の大学に通う18歳の女子大生。

母親から愛されていないのは自分が父親にも母親にも似ていないからだと感じ、自分の出生に疑問を持つ。

そして、全寮制の中学に入学したこと、東京の大学への進学を父親から猛反対されたこと、突然父親から海外留学を進められたことも、自分の出生に秘密があると確信する。

愛読書は『赤毛のアン』。

物語の随所に『赤毛のアン』を例えた表現が施されており、彼女の感受性の高さが見受けられる。

一見清楚でおしとやか、か弱い女性のイメージだが、その芯は強いものであり、下条の協力を仰ぎながら、自分の出生の真相に近づいていく。

読者が応援したくなるヒロインである。

 

 

6 小林双葉

もう1人のヒロインである小林双葉は東京の大学に通う20歳の大学生。

バンド活動に励み、活動的な面などは鞠子とは対照的。

勝気な性格でありながら、女性らしい部分も随所に垣間見られ、鞠子とはまた違った魅力的なヒロインである。

所属するバンドがテレビ出演した後、謎の男が母親を訪ね、その翌日母親が交通事故死する。

母の遺品整理をしているときに大物政治家・伊原駿策のスクラップを発見し、母の秘密に迫ろうとする双葉。

双葉に接触してきた雑誌記者・脇坂の協力を仰ぎながら、少しずつ謎の真相に近づくが、その姿はまさに勝ち気で行動的。

やはり読者が感情移入しやすく応援したくなる人物である。

 

 

7 総評

自分の出生の秘密を知ろうと本拠地北海道から東京に出てくる鞠子。

母の秘密を知ろうと本拠地東京から北海道に向かう双葉。

2人のヒロインがそれぞれ調査を進め、お互いの存在を知ってから、それでもなかなか巡り合えないもどかしさ。

そしてそれぞれに襲い掛かる身の危険。

物語が進むにつれだんだんと明らかになっていく真相。

長篇ではあるが物語の展開にどんどんと引き込まれていく。

黒幕が双葉に告げる残酷な事実。

罪を背負った人間の末路。

生まれも育ちも性格も違う2人のヒロイン、しかし奥底の芯の強さは共通している。

ラストはとても優しい気持ちになれる名シーンではないだろうか。

 

まとめ

『分身』7つのポイント

1 瓜二つの氏家鞠子と小林双葉の謎

2 氏家鞠子の出生の秘密

3 小林双葉の母親の謎

4 鞠子と双葉、それぞれの調査と謎の解明

5 なかなか巡り合わないヒロイン2人

6 ヒロインに襲い掛かる危険

7 黒幕の正体ときれいなラストシーン

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