~『虹を操る少年』7つのポイント~
『虹を操る少年』は、東野圭吾28作目の作品。
これまでの犯人捜しの本格ミステリーや医療や科学を扱った社会派ミステリーとは異なる作品です。
ファンタジー?SF?
ある特殊な能力を持った少年を中心に繰り広げられる物語です。
「光にメロディがあるの?」
「あるさ。みんな、そのことに気づいていないだけさ。」
”光”を”演奏”することでメッセージを発信する天才高校生・光瑠。
彼の「光楽」に、感応し集う若者たち。
しかし、その力の大きさを知った大人たちの魔の手が忍び寄る。
新次元コミュニケーションをめぐる傑作長編ミステリ。
さあ、『虹を操る少年』について語りましょう。
1 あらすじ
とある天才少年、白河光瑠。
高校生の彼は真夜中にこっそり家を抜け出すようになる。
そこには多くの若者が集まっており、その誰もが陶然とした表情を浮かべている。
「光楽」と名付けられた光瑠の光の演奏。
これは日本中を巻き込む一大ブームとなる。
光楽を大々的にプロモーションする大人とそれを阻止しようとする大人。
光楽に触れた者は、光楽に触れない期間が長くなればなるほど禁断症状が現れるようになる。
自分たちを支えてくれる光楽を守ろうとする少年少女と、光楽に麻薬のような危険を感じ光楽を無くしたい大人たち。
そしてそうなる状況をあらかじめ分かっていた光瑠。
果たして光瑠の目的とは?
そして何故大人たちは光楽の普及を阻止しようとするのだろうか。
光瑠に忍び寄る大人の魔の手。
そして事件は起こる。
2 登場人物
白河光瑠・・・高校生。光を操り演奏する「光楽」を普及させる。
相馬功一・・・暴走族グループ「マスクド・バンダリズム」のメンバー。
志野政史・・・高校生。クラスメイトに恋をして勉強に集中できない。
小塚輝美・・・中学生。家族の不和に悩んでいる。
木津玲子・・・謎の男・アイヅと愛人関係にある。
アイヅ・・・・正体不明の男。
佐分利・・・・光楽のプロモーター。
3 白河光瑠
白河高行が生まれたばかりの赤ん坊に会いに病院に行ったとき、新生児室にいた赤ん坊の1人が白い光に包まれていた。
彼は光瑠と名付けられ、3歳まではごく平凡に育っていた。
しかし光瑠が3歳のときにクレヨンで描いた絵は普通の3歳児が描くようなものではなく、本物そっくりに色彩が再現されているものだった。
小学校に上がると群を抜いて知能が高いことが分かる。
記憶力と計算力は驚異的で、教師たちからが疎まれるようになる。
中学生になると知識欲が旺盛になり様々なジャンルの専門書を読むようになる。
色や光を正確に認識する能力と並外れた知能を持つ光瑠は高校生になってからは部屋に籠りパソコンや機械の操作に没頭するようになる。
そして夜中にこっそりと外出するようになるのだった。
ここから光瑠の光楽の普及活動が始まる。
その影響は大きく、日本中を巻き込む一大ブームを起こす。
光瑠に心酔する若者たちと、光楽の普及を阻止したい大人たち。
そして光瑠に大人たちの魔の手が襲い掛かる。
しかし光瑠はそのことも予想しており泰然としているのであった。
4 相馬功一
現代の社会構造に疑問を抱き、それを破壊することを究極の目標にしているニュータイプの暴走族「マスクド・バンダリズム」のメンバー。
ある日見つけた謎の光に惹かれ、光瑠の光楽の虜になる。
父親の仕事のことを知り、父親のことを嫌悪している。
母親が亡くなり、父が再婚しその女性との間に子供が生まれてからは、ますます功一の居場所は無くなっていた。
光瑠のサポートをしていることを両親にも話していない功一。
功一にとっては光瑠のサポートが何よりも大切なことだった。
そんなある日、1人の女性と出会う功一。
彼女に惹かれていった功一は、光瑠のサポートに彼女を誘う。
5 志野政史
優秀な医師になり父親の病院を継ぐことを目標にしている高校2年生。
政史を医師にしたいという両親の夢を叶え、両親の期待に応えることが政史の生きがいであり、自身もこの状況を快適で楽に感じていた。
しかし最近の政史は勉強に集中できずスランプに陥っていた。
原因はクラスメイトに恋をしたこと。
政史の母親は政史が女の子に興味を持つことを極端に警戒している。
政史も今は勉強に集中すべきと分かってはいるが、彼女のことが頭から離れない。
そんなときに不思議な光を見た政史は、その光を見ることで気力が漲り勉強に集中できるようになる。
光楽に触れたことで好きなクラスメイトの女子と話すことも抵抗が無くなってきた。
その分、光楽に触れないときの禁断症状も顕著に表れるようになる。
表情から生気も失せた政史を見た母親は、光楽を危険なものと判断し、政史を光楽から遠ざけようとする。
政史の母親は光楽害対策研究会という団体に接触する。
そして政史は自分自身に不思議な力が宿っていることを感じ、また、好きだったクラスメイトの本性を知ることになる。
6 小塚輝美
同居する母親と祖母の不仲に悩み自殺を考えていた中学1年生の少女。
ベランダから飛び降りようとしたときに不思議な光を目にする。
毎晩午前2時に光を見つめる輝美は、そのうち深夜の小学校の屋上で行われていた光瑠の光の演奏を見に行くようになる。
光楽から遠ざかると何もかもに気力が無くなる輝美。
そのうち彼女自身にも変化が生じるようになってきた。
色彩感覚が異常に発達してきたのだ。
そして功一に抱く淡い恋心。
さらに目覚める新しい力。
光楽の普及にとって輝美は決して欠くことのできない人物となっていく。
7 木津玲子
謎の男・アイヅの愛人である木津玲子。
ある日光を見て魅了され昂ぶりを感じるが、なかなか光楽が演奏されているところまでは足を運ばなかった。
しかしいざ光の演奏を見ると惹き込まれていった玲子だが、それ以上に演奏を見た若者たちの反応に驚く。
光楽の話を玲子から聞いたアイヅは、玲子に光瑠の取り巻きに接触するよう命じる。
このアイヅの指示、そして玲子の行動が、光瑠たちに影響を及ぼす。