東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』

~『パラレルワールド・ラブストーリー』7つのポイント~

『パラレルワールド・ラブストーリー』は、東野圭吾29作目の作品。

2つの世界の話が交互に展開していくラブストーリーです。

しかし、そこはさすがに東野圭吾。

単純なラブストーリーだけでは終わりません。

人のエゴや見栄や弱さや嫉妬、愛情や友情など、様々な感情が交錯します。

 

親友の恋人は、かつて自分が一目惚れした女性だった。

嫉妬に苦しむ敦賀崇史。

ところがある日の朝、目を覚ますと、彼女は自分の恋人として隣にいた。

混乱する崇史。

どちらが現実なのか?

― 存在する二つの「世界」と、消えない二つの「記憶」。

交わることのない世界の中で、恋と友情は翻弄されていく。

 

さあ、『パラレルワールド・ラブストーリー』について語りましょう。

 

 

 

1 あらすじ

 

大学院生時代に、とある女性に思いを寄せていた敦賀崇史。

しかし彼女とは一度も接することなく社会人になる。

崇史とは中学生時代からの親友で、同じ会社に就職した三輪智彦から恋人を紹介したいと言われた崇史。

智彦が連れてきた女性を見て驚く。

彼女こそ、崇史がずっと思いを寄せていた女性だったのだ。

女性の名前は津野麻由子。

かけがえのない大切な親友に対し嫉妬心を持つ崇史。

ある日目を覚ますと、崇史と麻由子は恋人同士で同棲していた。

仕事も順調で、愛する麻由子と共にする生活は満足のいくものだった。

それが当たり前のこととして過ごしていた崇史だったが、ふと、親友である智彦について全く気にかけていない自分自身に違和感を覚える。

智彦はどうしたのか、この疑問を持った瞬間から、崇史の混乱が始まる。

 

 

2 登場人物

 

敦賀崇史・・・専門学校MACを経てバイテック社に入社。

三輪智彦・・・崇史の中学時代からの親友で会社でも同期。右足にハンデがある。

津野麻由子・・専門学校MACに在籍する。崇史の恋人なのか、智彦の恋人なのか。

篠崎伍郎・・・津野麻由子と同期入社。智彦の研究を手伝う。

直井雅美・・・篠崎伍郎の恋人。

須藤・・・・・バイテック社勤務。崇史のMAC時代の指導教官。

桐山景子・・・バイテック社中央研究所勤務。

小山内・・・・崇史のMAC時代の指導教官。

 

 

3 序章

 

この物語の序章が素晴らしい。

この序章部分で物語に引き込まれてしまう。

 

大学院生の崇史は週に3日決まった時刻に山手線に乗って大学の資料室に通っていた。

この山手線は、田町~品川間で京浜東北線と並走する。

崇史は、毎週火曜日に京浜東北線に乗っている女性に気づき、恋心を抱く。

就職を控えこの山手線に乗るのも最後という日、崇史は彼女に会うべく、いつもの山手線ではなく京浜東北線に乗りこむ。

しかし車内に彼女はいない。

落胆する崇史。

ふと並走する山手線に目を向けると、何と山手線に彼女の姿があったのだった。

崇史は次の駅で急いで山手線に乗り換えるが、とうとう彼女を見つけることはできなかった。

就職してその電車に乗ることが無くなった崇史はついに彼女に会うことはできなかった。

あっちはこっちのパラレルワールドなのかもしれないな、そう思う崇史だった。

 

ある日、中学時代からの親友・智彦から恋人を紹介したいと呼び出された崇史。

紹介された女性を見て崇史は驚く。

智彦が連れてきた女性こそ、京浜東北線の彼女、津野麻由子だったのだ。

親友の智彦を応援したい気持ちと、麻由子に対する思いに揺れる崇史。

自分の顔を見ると、嫉妬に醜く歪んでいた。

 

 

4 物語の構成

 

物語は2つのパートで構成されている。

1つは、麻由子が智彦の恋人になっている世界「scene」。

もう1つは、麻由子が崇史の恋人になっている世界「章」。

 

「scene」では、「俺」という崇史自らの目線で物語が進む。

ここでは、親友の智彦を大切に思う反面、麻由子をめぐって智彦に激しく嫉妬し、苦悩する崇史の姿が描かれている。

麻由子は智彦の恋人であると分かっていながら、どんどんと麻由子に惹かれていく崇史。

智彦との友情をとるのか、自分の麻由子に対する愛情を優先させるのか、崇史は葛藤する。

 

「章」は俯瞰で物語を進めている。

この世界では、麻由子は崇史の恋人になっており、同棲している。

仕事も順調で、愛する麻由子と共にする生活に満足している崇史。

しかし、ふと親友の智彦のことを思い出したとき、猛烈な違和感を覚える。

何故智彦のことが頭から離れていたのだろう。

智彦はロサンゼルスのバイテック本社に勤務しているというが、崇史はどうも釈然としない。

そして周囲で起きる不思議な現象や、関係者の不自然な証言。

崇史の頭の中に、自分が認識しているのとは違うシーンがどんどんと浮かんでくる。

夢であると思っていたそのシーンこそが、本当の現実ではないだろうか。

そう思った崇史は、智彦について独自に調査を始めるが、頭の中の記憶がどんどん混乱していく。

 

 

5 揺れ動く主人公の心

 

崇史にとって智彦は特別な存在である。

また、崇史も智彦にとって特別な存在である。

智彦は右足が不自由で、また見た目もそれほどパッとしないため、人との接触、とりわけ恋愛については苦手としていた。

女性たちは智彦のハンデを避け、智彦の話題にも乗ってこない。

恋人だと思っていた女性を崇史に紹介したときに、その女性から交際しているつもりはないと通告されたこともある。

崇史と智彦の間では恋愛問題については触れないようになっていたのだった。

そんな智彦が確信をもって恋人だと断言できる女性を紹介すると聞かされ喜ぶ崇史。

まさかその相手が自分が恋焦がれていた京浜東北線の彼女とは夢にも思わなかった。

その後も崇史は、智彦と麻由子と行動を共にするが、その度に麻由子に心惹かれ、智彦に嫉妬するのだった。

右足が不自由な智彦の前では運動の話も避けていたのだったが、智彦から2人でテニスでもすればよいと言われ、昼休みにテニスを行う崇史と麻由子。

それをじっと見つめる智彦の視線。

麻由子に対する思いは日に日に募り、崇史は麻由子にプレゼントを渡すなど積極的にアプローチしていく。

そして、麻由子の気持ちも智彦より自分に向いていると感じ、麻由子を何とか智彦から奪いたいと思うのだった。

 

 

6 手紙

 

物語の終盤に発見される、ある人物がある人物に向けて書いた手紙。

この物語の謎を解き明かす重要なこの手紙。

2つの世界はどのようにつながっているのか、どのようにつながっていくのか。

そしてその背景にある、ある人物の切ない願い。

この手紙が涙を誘う。

 

 

7 総評

 

素敵な序章から始まるこの物語。

序章で引き込まれ、ページをめくると、違った世界が展開されている。

しかしまた元の世界に戻る。

あちらの世界とこちらの世界、どっちが正しい世界なのか、どうして違った世界があるのか、2つの世界につながりはあるのか、謎と混乱が増えていく。

東野圭吾特有の専門的で難しい話が出てくるので、途中中だるみするところもあるかもしれないが、それ以上に崇史の葛藤や苦悩が見事に描かれていて、どんどんと読み進めることができる。

そして最後の手紙のシーンは圧巻。

読み終わった後に、もう1度整理しながら読んでみても良い作品かもしれない。

 

 

まとめ

『パラレルワールド・ラブストーリー』7つのポイント

1 素敵な序章

2 2つの世界が並行して展開される

3 親友の恋人に惹かれる崇史の苦悩と葛藤

4 現状の違和感の正体を突き止める崇史の混乱

5 2つの世界のつながりは?

6 智彦の思い

7 涙を誘う手紙

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