~スカッとするドラマ『PRICELESS』について~
『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』。
木村拓哉が演じるのは、会社をクビになり家もお金も失い貧乏になった男・金田一二三男。
全てを失いますが、貧しいながらも真っすぐ健気に生きている幼い兄弟との出会いをはじめ、ゼロからのスタートを切って色々な人と触れ合っていく中で、大切なものに気づき、そして彼と接した多くの人を惹きつけていく話です。
作品のテーマは「わらしべ長者」。
確かに毎話毎話取り扱うものがどんどん大きくなってきています。
香里奈演じる二階堂彩矢と中井貴一演じる模合謙吾とのやりとりもテンポよくコミカルで、そしてキメるところはキメて、爽快な気分になることができます。
キャッチコピーは「笑うが、価値。だろ。」。
この作品を上手に表したコピーではないでしょうか。
さあ、『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』について語りましょう。
1 概要
『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!』は2012年10月22日から12月24日まで毎週月曜日の21時からフジテレビ系「月9」枠で放送されました。
色々なドラマの視聴率が軒並み低下傾向にある中で、全ての回で視聴率15%以上を記録しました。
ドラマの中で、誰かが何かに対し「あるわけねぇだろ、んなもん!」的なツッコミを入れるシーンもくすっと笑わせてくれます。
仕事も家も携帯もお金も一気に失いどん底に陥った主人公・金田一二三男。
とかく暗くなりがちな状況ですが、そんな逆境を跳ね返す明るいコメディドラマです。
木村拓哉が明るく前向きな主人公を見事に演じています。
2 あらすじ
上司からも部下からも慕われる「ミラクル魔法瓶」営業企画部課長・金田一二三男。
ある日突然、内部機密情報流出の嫌疑をかけられ解雇処分となります。
その夜自宅が爆発、携帯電話は川に流され、貯金も底をついてしまいます。
全てを一気に失った金田一は、ゼロからのスタートを図ります。
極貧の幼い兄弟と出会い、500円を稼ぐことがどれだけ大変なことかを痛感する金田一。
それでも明るく前向きに進んでいく金田一のもとに、金田一の解雇に疑問を持ったため解雇された二階堂彩矢と、金田一のかつての上司で上層部に楯突いた模合謙吾も金田一と共に「幸福荘」でルームシェアすることになります。
そして様々な人との出会いの中で、人と人の触れ合いの大切さを知りながら、再起を図っていく金田一。
実は金田一解雇の裏には、彼の出生の秘密が関係していました。
ミラクル魔法瓶の創業者が、息子の大屋敷統一郎に対し、社長の座は統一郎の腹違いの弟である金田一二三男に継がせると遺言を残したのでした。
その遺言を握りつぶした統一郎は自らが社長に就任し、金田一を陥れようとしていたのです。
統一郎の妨害に合いながらも、金田一は多くの人を惹きつけながら前に進んでいきます。
3 登場人物・キャスト
金田一二三男・・・木村拓哉
模合謙吾・・・・・中井貴一
二階堂彩矢・・・・香里奈
大屋敷統一郎・・・藤木直人
榎本小太郎・・・・藤ヶ谷太輔
財前修・・・・・・イッセー尾形
大屋敷巌・・・・・中村敦夫
鞠丘貫太・・・・・前田旺志郎
鞠丘両太・・・・・田中奏生
富沢萌・・・・・・小嶋陽菜
鞠丘一厘・・・・・夏木マリ
広瀬瑤子・・・・・蓮佛美沙子
広瀬遼一・・・・・草刈正雄
藤沢健・・・・・・升毅
辻義人・・・・・・志賀廣太郎
能見実・・・・・・香川照之
4 金田一二三男
多くの人から慕われ、人を惹きつける魅力を持つ人物。
後輩のミスの謝罪に行きながら、新しい商談を成立させてくるなど機転も利きます。
一度にすべてを失うどん底に落ちながらも、持ち前の前向きで明るい性格により、少しずつ再起していきます。
草野球チームに所属しており、広島カープの大ファン。
美味しそうにビールを飲むシーンが印象的です。
かつては後先考えず欲しいものは購入する浪費家でしたが、貧乏生活に陥りお金の大切さを身に染みて痛感するようになります。
人との輪を大切にし、ハピネス魔法瓶を立ち上げてからも自分のことよりも関係する全ての工場のことを最優先にするなど、人を切り捨てることを決してしない人。
そんな金田一の相棒は二階堂彩矢と模合謙吾。
武将フィギュア好きの彩矢は、経理計算が速く、不正を許すことができません。
金田一の解雇に疑問を感じ調査したことがきっかけでミラクル魔法瓶を解雇されてしまいます。
存在感が薄く事なかれ主義の模合は、統一郎の方針に楯突き、統一郎に進言したことでミラクル魔法瓶を去ることになります。
2人は金田一と幸福荘でルームシェアをしながら様々なことに巻き込まれ、そして支え合っていくのです。
5 金田一の再起への歩み
金田一二三男の再起の歩みがまさにわらしべ長者。
最初は縁日の的当てで、宝物である北別府のサインボールで鞠丘兄弟のためにブルドーザーのおもちゃを狙うも失敗し、山中幸盛のフィギュアを当てます。
ラーメン屋の店主が山中幸盛のフィギュアを欲しがっていたため、それをきっかけにラーメン屋でバイトを始めます。
廃業を決意したラーメン屋から屋台を引き継ぎ、行きつけの店のホットドッグを売り始め評判となります。
ホットドッグには温かいコーヒーが付き物、という模合の言葉をヒントに、魔法瓶作りへの挑戦を試みます。
投資家・広瀬に1000万円でホットドッグ屋台の権利を売り、それを元手に彩矢、模合と共にハピネス魔法瓶を設立します。
かつてミラクル魔法瓶の関連工場だったが統一郎により切り捨てられた人たちと共に、抜群の保温力を誇る「究極の魔法瓶」を完成させます。
高額であるため最初はなかなか売れなかった「究極の魔法瓶」でしたが、雑誌に取り上げられたことにより評判を呼び、大ヒット商品となります。
そして、大ピンチに陥ったミラクル魔法瓶改めミラクルエレクトロニクス統一郎に対しても手を差し伸べ、再起を促していくのです。
6 寂しい敵役
ことあるごとに金田一を妨害する大屋敷統一郎。
父親である先代社長の方針とは全く異なる経営戦略でミラクル魔法瓶をミラクルエレクトロニクスという会社に変え、魔法瓶事業からの撤退、家電事業への展開を図ります。
父からの遺言で次期社長を腹違いの弟である金田一に継がせると聞き、徹底的に金田一を陥れようとします。
やることなすこと憎々しい人物ですが、その裏にどこか寂しさを感じます。
金田一の「社長こそ1人で何をしようとしているんですか」という問いかけは、統一郎の胸をえぐったのではないでしょうか。
父の方針とは真逆の経営方針を掲げ、これまでどんなに深い付き合いがあったとしても容赦なく契約を打ち切っていくその姿は、見ていてムカムカしてきます。
しかし、必要以上にムキになり、どこか寂し気で悲し気なその表情のせいか、心の底から嫌うことができません。
藤木直人がその絶妙なキャラクターを巧みに演じています。
終盤、従業員が自分の元を去り、ミラクルエレクトロニクスが最大の経営難を迎えたときに手を差し伸べた金田一。
統一郎が心の靄を脱ぎ捨て、素直に改心したその様子は感動を誘います。
7 名ゼリフ
『PRICELESS~あるわけねぇだろ、ンなもん!』にも名ゼリフがあります。
そのうちのいくつかをご紹介。
「ただ持っている金なんて、何の価値もないんだから、気持ちよくつかわないと」
「この子たちはね、大人が見向きもしないようなお金を毎日コツコツ集めてやっと210円貯めたの。大切な人にそのお金でビールを買うために」
「今の時代、自分のみを守るためには、相手の改善を待つよりも切り捨てた方が早い」
「最後の最後まであがいてますよ、金田一さんは。何でか分かんないけど損得抜きで」
「ビジネスマンの真価が問われるのはどういうときだと思いますか。契約を結ぶ時ではなく切るときです」
「新しいミラクル魔法瓶を作るという名目で先代が築き上げてきた大切なものをどんどん切り捨てていく。人も会社も理念までも。私はこの会社から切り捨てられるべき人間は彼らではないと思います。本当に切られるべき人間は、社長、あなたです」
「夫のために弁当を作る妻なんてのは都市伝説だよ」
「誰だっていい人でいたいものです。しかし、時には1万人を救うために1人を犠牲にしなければならない。そういう決断ができる人間でないと大きな組織を動かすことはできません」
「僕の思う理想の魔法瓶は金が儲かる魔法瓶じゃありません。みなさんと一緒に作る魔法瓶なんです。1人でも欠けるんだったら、もうやめにします」
「金田一って結果よりも人のつながりとか思いを大事にする男じゃない。それって、先代から私が教えてもらったことと同じなんだよね」
「たとえ結果が出なくともその過程の中でできたつながりとか思いがあればそれは決して失敗じゃない。思いのない成功より、思いのある失敗をした方が人も企業も大きくなるんだって」
「あの人にとってはプロセスも重要なんです。そこに関わる人とかその人の思いとか、そういうことを大事にする人なんです。だからたくさんの人が金田一さんについていこうって思うんです」