東野圭吾『卒業 雪月花殺人ゲーム』

~『卒業 雪月花殺人ゲーム』7つのポイント~

 

『放課後 雪月花殺人ゲーム』は、東野圭吾作品の中でも人気の「加賀恭一郎」シリーズの第1作目の作品です。

大学卒業を間近に控えた加賀恭一郎が初めて遭遇した事件を解決していく様子が描かれています。

 

七人の大学四年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。

ある日、祥子が自室で死んだ。

部屋は密室、自殺か、他殺か?

心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手掛かりに死の謎を追求する。

しかし、第二の事件はさらに異常なものだった。

茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相は!?

 

さあ、『卒業 雪月花殺人ゲーム』について語りましょう。

 

 

1 あらすじ

加賀恭一郎と沙都子、藤堂、祥子、波香、若生、華江の7人は、みな国立T大学の4年生で、県立R高校時代からの友人。

ある日、沙都子と波香は、祥子がアパートの自室で死んでいるのを発見する。

左手首を切ったことによる出血多量が死因であること、死体発見現場が密室であったことから、祥子は自殺したものと思われていた。

加賀たちは祥子が残した日記から自殺の原因を探ろうとするが、いくつかの供述に矛盾点があり、他殺の可能性も浮上する。

加賀自身も祥子は自殺したのではなく、何者かに殺されたのではないかと疑問を持っていた。

そして、かつての茶道部の顧問で加賀たちの恩師である南沢雅子に祥子の死を報告しに行ったその日、毎年恒例の「雪月花之式」の最中に、今度は波香が毒物を飲んで死んでしまう。

祥子の死の真相は?

波香の死の謎は?

大学生時代の加賀恭一郎の推理が冴え渡る!

 

 

2 登場人物

加賀恭一郎

T大社会学部社会学科4年生。

学生剣道個人選手権で2年連続優勝するほどの剣道の腕前を持つ。

沙都子のことが好きで結婚したいと考えている。

卒業後は迷いの末、父と同じ警察官ではなく教師の道に進むことを決めている。

相原沙都子

T大文学部国文科4年生。

父、父の後妻、弟の4人で暮らしている。

卒業後は東京にある出版社への就職が決まっているが父からは反対されている。

高校から剣道部に所属している。

藤堂正彦

T大理工学部金属工学科4年生。

高校時代は剣道部の主将。

大学入学と同時に祥子に告白し現在も付き合っている。

卒業後も大学に残って修士課程に進む予定。

牧村祥子

T大文学部英米文学科4年生。

藤堂の恋人で、女子専用アパート「白鷺荘」の2階に住んでいる。

おとなしい性格で他人に引っ張られるところがあるが、成績も良く男性からの人気も4人の中では一番高い。

趣味は旅行で、卒業後は旅行社への就職が決まっている。

左手首を切り洗面器につけた状態で亡くなっているのが自室で発見された。

金井波香

T大文学部英米文学科4年生。

祥子と同じ研究室に所属し、「白鷺荘」の祥子の部屋の向かいに住んでいる。

女剣士の頂点を目指しており、学生剣道個人選手権で準優勝するほどの腕前。

喫煙者で酒も強く、男性関係も活発。

南沢雅子の家で開催された「雪月花之式」の最中に服毒死する。

若生勇

T大4年生。

テニス部員で華江とペアを組んで全国大会出場を目指している。

グループ内のムードメーカーで、就職も華江との結婚も決まっている。

学生運動の闘士だった兄がいる。

井沢華江

T大文学部国文科4年生。

若生の恋人。

小柄で愛くるしく年より若く見られる。

気性が激しい。

南沢雅子

加賀たちの県立R高校時代の恩師で茶道部の顧問。

教師を辞めた今でも、加賀たちは南沢家に集まり近況報告するのが恒例となっている。

某国立大学の数学教授だった夫とは10年以上前に死別している。

三島亮子

S大4年生。

学生剣道個人選手権の優勝候補で県の学生チャンピオン。

父親が商社重役であるお嬢様。

佐山

がっしりした体格で顔が浅黒く、年齢は30歳過ぎくらいの県警刑事。

緩いウェーブがかかった髪を耳のあたりまで伸ばしており、刑事に見えない。

 

 

3 祥子の死の謎

当初自殺と思われていた祥子の死であるが他殺の可能性も出てきた。

しかし死体発見現場は、管理人の目が光り外部からの進入が不可能な女子寮。

そして祥子の自室は施錠されている。

他殺の場合、犯人は一体どうやって祥子の部屋に入ったのだろうか。

そして祥子が死ななければならない理由とは。

 

 

4 波香の死の謎

南沢宅で催された「雪月花之式」で波香が服毒死する。

札を使ったクジ引きで茶を飲む者、菓子を食べる者、次の茶の準備をする者を選ぶこのゲーム。

もちろん誰がどの札を引くのかは分からない。

どのようなトリックで波香は毒を飲んだのか。

波香が死ななければならない理由とは。

 

 

5 トリック

今作は、密室とクジ引きという2つの謎を解明しなければならない。

さらに2つ目の事件については、茶道の「雪月花之式」というゲームのルールも理解しなければならない。

ゲームの理解およびトリックの解明に少々骨が折れるため、トリック部分に関しては読み飛ばしてしまう読者もいるかもしれない。

しかし、よく練られたトリックであり、作中には図解もあり分かりやすく説明してくれているので、しっかり読み込んで謎解きを楽しむこともできる。

 

 

6 舞台設定

勉強、進路、部活、恋、友情など大学生ならではの揺れ動く心情が、沙都子を主な視点として見事に描かれている。

剣道部と茶道部という、あまり推理小説では一般的ではない部活動を取り扱っており、それが事件と結びついているところも特徴。

1986年に刊行された作品であるため、大学生の考え方も今とは少し違っている。

東野圭吾作品を『ガリレオ』シリーズや『マスカレード』シリーズなどから読み始めた読者にとっては、想像していた雰囲気、作風とは一味違った作品であろう。

 

 

7 学生時代の加賀恭一郎

大学生時代であっても、その頃から加賀は加賀っぽい。

事件に対してもどこか冷めた感じで淡々としている様子や、飄々と警察と対峙しているところは、警察になってからの加賀を髣髴とさせる。

しかし、剣道の大会の最中に事件の真相に近づいていることを感じた加賀が試合に集中できない様子は、まだ若い学生らしく、他の作品ではなかなか見られない姿ではないだろうか。

また、「加賀恭一郎」シリーズではお馴染みの加賀の父親もちょっと面白い形で登場し、加賀の推理に一役買っているところも見所。

 

 

まとめ

『卒業 雪月花殺人ゲーム』7つのポイント

1 加賀恭一郎の学生時代の話

2 それぞれの登場人物のキャラ分け、描写が見事

3 祥子の死の真相は?

4 波香の死の真相は?

5 密室とクジ引きの2つのトリックの解明

6 剣道と茶道というあまり馴染みの無い舞台設定

7 大学生7名の青春小説としての楽しみ方